
〜改正労働安全衛生法により全事業者が対象に〜
2025年5月8日、改正労働安全衛生法案が可決され、従業員数にかかわらず、すべての事業所でストレスチェックの実施が義務化されることとなりました。これまで対象外だった中小・零細企業や個人事業主にも適用されるようになり、すべての事業主にとって対応が必要になります。
これまでの制度と今後の変更点、事業主として取るべき対応について、わかりやすく解説します。
目次
◆ そもそも「ストレスチェック制度」とは?
ストレスチェック制度とは、労働者の心理的ストレス状況を把握し、メンタルヘルス不調の予防を図ることを目的とした制度です。労働安全衛生法に基づき、医師や保健師などの実施者によって、労働者本人が簡単な質問票に答える形で行われます。
◆ これまでの制度(旧制度)
● 対象事業所:
- 常時50人以上の労働者を使用する事業所が対象
- 50人未満の事業所は努力義務(実施は任意)
● 実施頻度:
- 年1回以上の実施が義務(行政への報告義務あり)
● 実施対象者:
- 正社員や契約社員、パート・アルバイトなどの常時雇用されている労働者
- 業務委託(フリーランス等)は対象外
◆ 今回の改正のポイント:全事業所に義務化!
2025年4月施行の改正労働安全衛生法では、以下の点が変更されます。
🔹【1】対象事業所の拡大
常時雇用労働者の人数にかかわらず、すべての事業所にストレスチェックの実施が義務化
➡ これまで義務対象外だった、50人未満の事業所でも対応が必要になります。
🔹【2】実施体制の確立が必要に
ストレスチェックを実施するには、医師・保健師などの有資格者の関与が必須
➡ これまでストレスチェックの実施義務対象となる50名以上の事業所については、同時に産業医の選任が必須となっておりましたが、小規模事業所では外部の産業医・実施者との連携をどうするかなど、詳細については随時情報をアップデートします。
🔹【3】高ストレス者へのフォロー義務は維持
高ストレスと判定された従業員が希望した場合、医師による面接指導を受けさせることが義務
➡ 面接結果に応じた労働時間・配置の見直しも必要になる可能性があります。
◆ 事業主が取るべき対応は?

✅ 1. 対象者の把握
- 正社員・契約社員・パート・アルバイトなど、常時雇用されている従業員を対象
- 契約期間に関係なく、週1日以上勤務していれば対象となる場合あり
✅ 2. 実施体制の整備
- 医師・保健師などの資格者に実施を依頼(社外委託も可能)
- 外部の産業医サービスやEAP(従業員支援プログラム)導入を検討
✅ 3. 実施計画と社内周知
- ストレスチェックの目的、方法、時期などをあらかじめ労働者に通知
- プライバシー保護や結果の扱いについても説明が必要
✅ 4. 高ストレス者への対応
- 医師の面接指導体制を整備
- 面談後、必要に応じて就業措置(労働時間の短縮、部署変更等)
◆ 罰則や違反のリスクは?
ストレスチェックを実施しない場合、労働安全衛生法違反となり、是正勧告の対象になります。重大な違反の場合は、50万円以下の罰金が科される可能性もあります。
また、従業員の精神疾患が労災として認定された場合、安全配慮義務違反として企業が損害賠償責任を問われるリスクもあります。
◆ 小規模事業所でも取り組みやすい工夫
- ✅ 無料の厚生労働省提供のストレスチェックソフトを利用
- ✅ 地域産業保健センター(産業医がいない中小事業者向け)を活用
- ✅ 社労士・産業医の顧問契約を活かした制度整備
◆ まとめ:ストレスチェック義務化は“コスト”ではなく“投資”
従業員の心の健康を守ることは、離職防止・生産性向上・職場の信頼関係構築に直結します。今後は規模の大小にかかわらず、「メンタルヘルス対策は企業の責任」という時代になります。
今のうちに、制度設計・実施体制の構築・社内の理解促進を進めておきましょう。
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