退職後、失業手当の申請の方法と注意点

社労士コラム

退職を控えた方から「失業手当はいつからもらえるのか」「自分は対象になるのか」というご相談を受けることがよくあります。失業手当(正式には雇用保険の「基本手当」)は、離職後の生活を支えながら再就職活動に専念するための大切な制度ですが、要件や手続きの流れを誤解したまま退職してしまうと、想定より受給開始が遅れたり、そもそも対象外だったりすることもあります。

本記事では、失業手当(基本手当)の受給要件と申請の流れを整理してご説明します。

1. 失業手当(基本手当)とは

失業手当という呼び方は通称で、雇用保険法上の正式名称は「基本手当」です。雇用保険の被保険者であった方が離職し、就職しようとする意思と能力があるにもかかわらず職業に就けない状態にあるときに、生活の安定を図りながら求職活動を後押しするために支給されます。

ハローワークインターネットサービスでは、基本手当について「求職者の失業中の生活の安定を図りつつ、求職活動を容易にすることを目的とし、被保険者であった方が離職した場合において、働く意思と能力を有し、求職活動を行っているにもかかわらず、就職できない場合に支給されるもの」と説明されています(出典:厚生労働省「基本手当について」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000135026.html )。

つまり「退職した」というだけでは支給対象にならず、

 ①働く意思・能力があること

 ②実際に求職活動をしていること

 ③それでも就職できていないこと

という「失業の状態」であることが前提になります。

2. 受給できるための2つの要件

ハローワークインターネットサービスの解説によれば、雇用保険の基本手当は次の1・2のいずれにも該当するときに支給されます(出典:ハローワークインターネットサービス「基本手当について」 https://www.hellowork.mhlw.go.jp/insurance/insurance_basicbenefit.html )。

(1)「失業の状態」にあること

ハローワークに来所して求職の申込みを行い、就職しようとする積極的な意思があり、いつでも就職できる能力があるにもかかわらず、本人やハローワークの努力によっても職業に就くことができない状態であることが必要です。

そのため、次のような場合は、たとえ雇用保険に加入していても基本手当を受けることができません。

  • 病気やけがのため、すぐには就職できないとき
  • 妊娠・出産・育児のため、すぐには就職できないとき
  • 定年などで退職して、しばらく休養しようと思っているとき
  • 結婚などにより家事に専念し、すぐに就職することができないとき

退職後しばらくゆっくりしてから求職活動を始めたい」「けがや病気などど働ける状態にない」というケースは、この「失業の状態」の要件を満たさないため注意が必要です。

(2)被保険者期間の要件

離職日以前2年間に、被保険者期間が通算して12か月以上あることが必要です。ただし、倒産・解雇など会社都合により離職した「特定受給資格者」や、一定の「特定理由離職者」に該当する場合は、離職日以前1年間に被保険者期間が通算して6か月以上あれば要件を満たします。

ここでいう「被保険者期間」は、単に在籍した月数ではありません。離職日から1か月ごとに区切った期間のうち、賃金支払の基礎となった日数が11日以上、または賃金支払の基礎となった時間数が80時間以上ある月を1か月として計算します。

転職をしている場合でも、原則としてそれぞれの勤務先での加入期間を通算できますが、通算には条件があるため、個別のケースはハローワークに確認することをおすすめします。

3. 申請の流れ

失業手当の受給までの流れは、おおむね次のようなステップで進みます。

ステップ1:離職票の受け取り

退職後、会社から「雇用保険被保険者離職票」(離職票-1・離職票-2)が交付されます。
離職票には離職理由が記載されており、この離職理由が「自己都合」か「会社都合(特定受給資格者・特定理由離職者)」かによって、後述する給付制限の有無や所定給付日数が変わってくるため、非常に重要な書類です。内容に誤りや疑問がある場合は、早めに会社またはハローワークに確認しましょう。

ステップ2:ハローワークでの求職申込み・受給資格の決定

住所を管轄するハローワークに離職票などの必要書類を持参し、求職の申込みを行います。ここでハローワークが受給資格の有無を審査し、要件を満たしていれば「受給資格者」として決定されます。
★住民票の住所を管轄するハローワークでないと手続きができないため、退職と同時に遠方への引っ越しを検討されている方は、必ず住民票を移しましょう

ステップ3:7日間の待期期間

受給資格が決定した日から、実際に失業状態にあった日が通算して7日間経過するまでは、基本手当は支給されません。これは離職理由を問わず、すべての受給資格者に共通する期間です。

ステップ4:雇用保険受給者初回説明会

待期期間中または待期満了後に、ハローワークが指定する日時で受給者初回説明会が開催されます。ここで雇用保険受給資格者証や失業認定申告書が交付され、以降の失業認定日や求職活動のルールについて説明を受けます。

ステップ5:給付制限期間(自己都合退職の場合)

自己の都合により退職した場合は、7日間の待期期間の満了後、さらに一定期間、基本手当が支給されない「給付制限期間」が設けられています。

この給付制限期間は、以前は原則2か月でしたが、令和7年(2025年)4月1日以降に離職した方については、原則1か月に短縮されています(出典:厚生労働省「令和7年4月以降に教育訓練等を受ける場合、給付制限が解除され、基本手当を受給できます」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000160564_00045.html )。
ただし、離職日前5年間に正当な理由のない自己都合退職を2回以上行い受給資格決定を受けている場合は、3回目以降の給付制限が3か月となる取り扱いは維持されていますので、退職を繰り返している方は注意が必要です。

なお、倒産・解雇等による離職(特定受給資格者)や、正当な理由のある自己都合退職(特定理由離職者)に該当する場合は、この給付制限は課されません。

ステップ6:失業認定と求職活動実績

受給資格者は、原則4週間に1回、指定された「失業認定日」にハローワークへ出向き、その期間中に求職活動を行ったこと等を「失業認定申告書」で申告します。2回目以降の認定では、認定対象期間中に原則2回以上の求職活動実績が必要とされています。ハローワークでの求人閲覧のみや、知人への紹介依頼だけでは求職活動として認められない点にも留意が必要です。職業相談や企業説明会への参加、履歴書の提出、各種セミナーの受講なども実績として認められる場合があります。

ステップ7:基本手当の振込

失業認定を受けた分の基本手当は、認定日からおおむね5営業日程度で、指定した口座に振り込まれます。以降は、失業状態が続く限り、4週間ごとの認定と振込が所定給付日数に達するまで繰り返されます。

4. 受給できる金額と日数の目安

基本手当の1日あたりの支給額を「基本手当日額」といいます。これは、離職直前6か月間の賃金(賞与等を除く)の合計を180で割った「賃金日額」のおよそ50〜80%(60〜64歳は45〜80%)で、賃金が低い方ほど高い率となる仕組みです。年齢区分ごとに上限額が定められており、定期的に見直されます。

基本手当を受けられる日数(所定給付日数)は90日から360日の範囲で、離職時の年齢、被保険者であった期間、離職理由によって決まります。倒産・解雇等による離職者(特定受給資格者)は、一般の離職者よりも手厚い給付日数が設定される場合があります(出典:前掲ハローワークインターネットサービス「基本手当について」)。

5. 顧問先の皆様へ:実務上の留意点

顧問先の社長様からは、従業員の退職時に「離職理由をどう書くべきか」というご相談を多くいただきます。離職票の離職理由は、給付制限の有無や所定給付日数に直結するため、事実と異なる記載はトラブルの原因になります。一方で、退職の経緯によっては会社都合・自己都合の判断が難しいケースもあり、離職証明書の記載や証拠書類の整備を誤ると、後日ハローワークからの照会や、退職者とのトラブルに発展することもあります。迷った際は、離職票を発行する際に必ず管轄のハローワークに確認をしていただくようお願いいたします。

有期契約社員の雇止めや契約更新の考え方によっても、特定理由離職者に該当するかどうかが変わってきます。退職者の生活に直結する制度であるからこそ、事業主側としても正確な手続きが求められます。

まとめ

失業手当(基本手当)は、
①失業の状態にあること
②一定の被保険者期間があること
の2つの要件を満たすことで受給できる制度です。申請から実際の受給までは、離職票の受け取り、ハローワークでの求職申込み、7日間の待期期間、(自己都合の場合は)給付制限期間、失業認定というステップを踏んで進みます。令和7年4月の制度改正により、自己都合退職の場合の給付制限期間は原則1か月に短縮されており、以前より早期に受給を開始できるようになりました。

退職を検討されている方は、ご自身の離職理由や被保険者期間を確認したうえで、早めにハローワークや社会保険労務士にご相談いただくことをおすすめします。また、事業主の皆様におかれましては、離職票の作成や離職理由の記載について不明な点があれば、お気軽に当事務所までお問い合わせください。

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